咎もなく誉もない日々

そうでない人がそれなりにやっていくブログ

サイコロきっぷでいく瀬戸内アイランドホッピングの思い出 4

今治のホテルで8時間ぐらい泥のように眠って起きた。
2日目は 四国本島から船で大崎上島を経由して大崎下島に渡り、そこからはとびしま海道経由のバスで呉に向かう予定になっている。
出発は早朝なので宿から今治港までのバスはない。歩けない距離ではないけれど足が死んでるのでタクシーを手配しておいた。
港についたら、花火観覧用のブルーシートが敷いてある。今日も花火があるらしい。朝の凪いだ海がすごく綺麗で良い。何一ついいことなかった今治ともお別れである。

今治から大崎上島の木江港までは、フェリーが出ているが直行便は少なく、大三島までは市営の渡船で渡って大三島でフェリーに乗り換える。当初想定してた行程では昨日も大三島-今治の渡船に乗ることになってたけど、結局は今日も乗るのだから、この旅ではいろいろ乗りたいという前提なのだし昨日途中で断念してバスに乗ったのは結果オーライだった。

これが今日乗る船「とびしま」

大三島の宗方港は思った以上に何もなかった。

だいたい「フェリーターミナル」というと、津軽海峡フェリーとか、佐渡汽船とかの近代的で大きいターミナルを想像してしまうけれど、そういうのばかりではない。

ここで、大三島ブルーラインの「みしま」に乗り換える。

船内はゆったりしてて味わいがあった。

omishima-bl.net
大三島ブルーラインは、これ一隻で運行してるんだって。

すぐに木江港についた。

下調べしておいたところ、木江港の待合室には簡単な売店があるということだったが…

渋い

予想以上に民家だった。あまり冷房も効いておらず、蒸し暑い。

船の乗り換えまでには時間があるし、売店で何か買って朝ごはんにしようかなと思ってたけど、そういう売店ではなかった。まあ、そこまでお腹も空いていないから、それはそれでよかった。

今回乗ろうとしている竹原から出てる高速船は、木江を経由して目的地である大崎下島の大長港まで向かうので、直行しても良かったのだけど、今回はちょっと寄ってみたいところがあった。

大崎上島には「明石港」があるのだ。

私の出身地の兵庫県明石市も港町で、当然、明石港がある。幼い頃から親しみのある港だし、同じ名前の港で「ふーん、あんたも明石港っていうんだ」ってちょっと言ってみたかった。

なので、あえて明石で一旦船を降りて、明石小長間のフェリーに乗りかえるルートにした。
木江と明石は同じ島だし、島内バスもあるから最初はバスで移動するつもりもあったけど、時間が合わなかった。結果、同じ島の港を船で移動するという面白いルートを踏めた。

高速船がつくと待合室の店番をしていたおねえさんが日傘をさして桟橋に向かい、慣れた手付きで船の係留手伝って足場出したりしてくれる。なんか、むちゃくちゃ生活に密着した感じがするし、船もすごくかわいい。

habushosen.jp


桟橋で待ってるときに「これから明石に行くんです」っていったら「あそこはなんもないよー」って言われたけど、木江もわりと「何もない」の部類に入ると思うし、どんだけなんもないんだと思ったら、一応、コンクリート作りの待合所はあった。

あんたも明石港っていうんだ

冷房は効いていたが、売店とかはないので確かに「なんもない」だった。

そして、明石小長間のフェリーはすごいミニマムだった。


完全に、車を載せるためだけの船。これまでの客船にあったような船室はなくて、廊下においてあるベンチみたいなのが「客室」。車を運ぶついでに人を載せてもらっている感じ。

habushosen.jp

大崎上島はとびしま海道ともしまなみ海道とも道路でつながってないので、本州や四国に向かうにはフェリーだけが頼りになる。だから車を運ぶために特化したフェリーが航行してるのだろう。

10時ごろに小長についた。小長には、日本初の「海の駅」というのがある。「道の駅」の海バージョンで、グランピングサイトがあったりするらしい。
new-tobisimakan.com
おしゃれげなサイトがあるが、実際に行ってみないと何があって何がないのか本当にわからないのが島である。海の駅の営業開始は11時となっていて、ちょっと時間がある。
港からちょっと歩くと古くからの街並みがあったりブリュワリーもあったりするということだったが、暑いし体調も回復してないので、そういうプチ観光は最初から諦め、冷房が効いて座れるところさえあればそこで時間を潰す一択だろうな。
ちなみにGoogleマップでブリュワリーを見たら、「ここではビール飲めないし買えないぞ」と英語でキレてる人がいて気の毒だった。たしかにビールを飲むつもりで足を伸ばして飲めなかったらキレる。気持ちはわかる。

小長港の待合室は冷房が効いてて助かった。テレビはサンジャポで、微妙に不愉快なニュースが流れてくる。待合室にも食堂があると聞いていたけれど、どうやらやってない。インスタ撮影場所の残骸がせつない。

隣りにあるバスの営業所とかチェックしてたらそろそろ開店時刻になったので、海の駅に行ってみると謎の張り紙がある。

寿司職人が滞在すると寿司しか出せないというのはどういうことなのだろう。大年寺三郎太的な流れの寿司職人がいるとか? 気になりすぎる。

店内はかなりオシャレだし、大橋歩さんのzine「arne」があったりする。へえ、と思う。大年寺がいるとは思えない店構えである。表のテラスではグランピング客と思われるマリンスポーツしそうな家族連れが爽やかにブランチを食べているし。
寿司はお時間いただきますとのことだけど、バスまでの時間はたっぷりあるので問題はない。
飲み物は缶で冷えてるハイボールとチューハイしかなくてセルフで冷蔵庫から出すシステム。これも選択肢がないのでハイボールを飲んでしばし待ち、運ばれてきたのがこれですよ。


サーブされた瞬間から海とレモンの香りが漂う美しい盛り付け。ランチというより上質なアペタイザーなのである。
想像を大きく裏切る一皿だった。鮮烈な香りの地元の野菜や果物が美しくカットされ添えられ、新鮮な魚がきっちりと仕事されて寿司になってる。そして焼きサザエがとってもジューシー。これで今治の悲しい体験が完全にリセットされた。私は、こういうのが食べたかったんだよ。欲を言えば白ワインかシャンパンと合わせたかったけど、もうこれはハイボールでも十分。

やっぱり、島に何があって何がないのかは行ってみないとわからない。なにもないのに寿司だけあったりする。
もっと何かこの土地のものが食べたいので、ケーキを頼んだ。

これも極めて美しく盛り付けられていて、いきいきとしたブラックベリーがすごかった。

こういうことってあるんだなあ。

すっかり気分が良くなってしまった。そして、大崎はとてもおいしい食べ物がある島なのだということがわかったので、土産物屋さんで島の人が作ったという瓶詰めやレモン果汁や調味料を買い、待合室に戻りバスを待った。待合室にあるマンガのラインナップが渋い。

ここには、バスターミナル、港、海、おいしくかわいい食べ物、居心地の良いカフェ、寂れた待合所と私の好きな要素が揃っている。
大崎上島には温泉宿もあるらしいし、もう一度訪れてみたい島々だった。大三島もリベンジしたい。(もっと気候が良い季節に)

ここからは、2時間半バスに乗れば呉市街に着く。この島も実は呉市内なのだ。