⚠ 長いし、あくまで個人の体験に基づく見解です。
正統派の筋トレダイエットで失敗した体験
個人的な体験として、かつてジムに真面目に通ってパーソナルトレーナーもつけて、トレーナーの言う通りに食事も管理する生活を3ヶ月続けたことがある。体重は4kgほど減ったけど、とても頑張った割に体脂肪はまったく減らず、減ったのは水分のみ。完全に心が折れた。ある程度筋肉はついたけれども筋肉の上にしっかり脂肪がついた強そうな体格になってしまった。動けるデブの爆誕である。
メニューを考えるトレーナーに対して遠慮があり「健康体になりたい」とか書いちゃったのが敗因だと思う。「美魔女になりたい」とでも正直に書くべきだった。今にして思うと、ガチでキレイになりたいと思ってジムに通ってるとは思われてなかったんじゃないかしら。
筋肉がつく=脂肪が減る??
でも、ずっと不思議に思ってるんだけど、筋トレをすすめる人々が
- とにかく筋トレ
- 食事制限はダメ
って言うけれども、それ痩せる方法じゃなくて筋肉つけて食べ物がちゃんと代謝される方法、すなわち太らない方法だよね。糖質制限勢のいう「血糖値が安定してインシュリンが過剰分泌されなければ太らない」という理屈も太らない方法だし。
確かに、食べたもののエネルギーがキレイに代謝されて体脂肪として蓄積されなければプラスマイナスゼロで「太らない」けれど、我々は、今この体にすでについてる体脂肪をどうにかしたいわけですよね。そう考えると、とにかく脂肪が減る仕組みについての情報がなさすぎると思う。
まあ、人類の歴史の中で、肥満が問題となりだしたのはほんの数十年前ぐらいのことで、それまでは栄養や健康領域で求められていたのは「食糧が乏しい中で、いかに栄養を摂取して健康に体格を良くするか=太るか」という研究であり、ダイエットに関するまとまった研究が行われだしたのは比較的最近。太った人が痩せる方法に関する研究で中立的かつ大規模になされたものは少なく、その少ない実験もすべて「カロリー制限」「適度な運動」などの仮説がことごとく否定される結果に終わった…というのがトロント最高本の内容のほとんどを占めてる。ちなみにトロント最高本は「痩せる」ではなく「太らない」というタイトルなので誠実。
- 作者:ジェイソン・ファン
- 発売日: 2019/01/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
世に出回っているダイエットの理屈のほとんどは「こういう生活をしている人は太りにくい、太っていない」というデータを「同じ生活をすりゃ痩せる」とすりかえて適用しているか、糖尿病に関する研究結果を応用して推論したものだけなので、一旦、白紙にして考え直したほうがよいのかも。
ここで、あらためて「体脂肪が燃える」とはどういうことか冷静に考えてみた
ダイエットで体脂肪が減る仕組みはわかっている。人体は、食べ物に含まれる糖や体内に蓄えられているグリコーゲンをエネルギーとして使うけど、それらを使い切ったら仕方がないので体の組織を分解してエネルギーとして使う。そこで初めて体脂肪が使われる。*1だから、糖質制限で痩せる理由は、直接的には「低血糖になるから」ということになる。低血糖になり体脂肪が分解されて血中に遊離脂肪酸が増え、それがエネルギーとして使われるから痩せる、それ以外に痩せる方法ってないですよね。(他の機序がもしあるなら教えて欲しいけど)
しかし、厄介なことに、人体には、血中に遊離脂肪酸が増えると視床下部の摂食中枢が刺激されお腹が空くという仕組みがある。体にしてみたら「大事な体脂肪が使われてる!やばい!栄養不足だからなんか食べてー」ってとこです。「今月赤字だから追加予算ください」とかそれです。ちなみに「今月赤字だから経費節減しましょう!」ってのが「代謝が落ちる」というやつですね。筋肉が減るから筋肉で使われるエネルギーが減って代謝が落ちるのではなく、脳がそう命令しているわけ。そして、人間は脳からの命令にすごく弱く、生存欲求に根ざした切実な空腹感に抵抗するのは難しい。
すでに太ってしまった人の体は、そういう感じで一筋縄ではいかない。人体にとって体の組織が壊れるのは一大事なので、拮抗するホルモンを出し、抗い難い食欲を発生させたり代謝を下げたりして生存をかけて頑張るのだ。私が捨てたいこの脂肪は、私の体にとっては大事な財産なのよ。
とにかく単純に「低血糖にならないと脂肪は燃えないし、脂肪が燃えたら空腹になる」というのは避けられない真実だと思う。他に逃げ道があったら本当に教えてほしい。
なぜ、痩せるために必要な「低血糖」や「空腹」はタブー視されてきたのか
こんな事実があるにも関わらず、「低血糖」とか「空腹」を推奨する人はあまりいない。最近、1日1食やファスティングなど空腹時間を作ることをすすめる本が売れてるけど、それでもamazonのレビューを読むと反発が多い。
それは、低血糖になって使われる組織は脂肪だけではなく筋肉もだからで、特に、筋トレ世界では低血糖により筋肉が落ちることを「カタボる」といって忌み嫌われている。カタボとは、カタボリック=異化という作用で、これは、前の章で書いた「人体は、食べ物に含まれる糖や体内に蓄えられているグリコーゲンをエネルギーとして使うけど、それらを使い切ったら仕方がないので体の組織を分解してエネルギーとして使う。」というまさしくそれこそが「カタボリック」なのだ。
今でも、ボディメイク勢はダイエッターに対して「低血糖になると筋肉が分解されるから食事制限はダメ、空腹にならないようこまめに栄養補給」「過激なダイエットは筋肉から痩せて代謝が下がりリバウンドしますよ」って言いつづけている。でも、体の組織が分解されなければ体脂肪はいつ分解されるんだろう。これに対して良い解をお持ちのボディメイク専門家がおられたら、ぜひ詳しくお話を聞きたい。
筋肉を増やし、脂肪を燃やすことはできるのか
もしも、ある条件では筋肉が優先して使われ、ある条件では脂肪が優先して使われる、ということがわかっているなら、脂肪が優先して使われる条件を満たすのが正しいダイエットということになるけど、どうもそういうデータがない。
なんとなく健康的っぽく見える方式なら脂肪が燃えて、不健康っぽく見える方式なら筋肉が落ちるとか、すごいふわっとした認識が世間に浸透してるけど、体はそんな雰囲気で動いてるとは思えない。
トロント最高本では「飢餓状態で筋肉が衰えると食糧を摂るのに動けなくなって支障きたすことになるのだし、自然の摂理として生存に必要な筋肉よりもすぐに必要ない脂肪から使われるだろう」という見解を「薪が十分あるのにソファを燃料にするだろうか」という表現で述べてるけど、それだってデータがあるわけでもないし、もしかしたら無駄な筋肉よりも脂肪を残すほうが断熱効果があって生存性高いという考え方もある*2し、ソファがそんなにいらなければ、いざというときのために薪を温存して邪魔なソファを燃やす人だっていると思う。
フラットに考えると、同じカタボリックという現象が、ダイエットにおいては歓迎すべきことで、ボディメイクでは回避すべきこと、そういうことじゃないのかな。そもそも全然違うことをやろうとしているのに、情報が混ざってるので話がややこしくなって、せっかく低血糖になって脂肪が燃えだしたというのに「低血糖は体に悪いから何かつまもう♡」って「健康的なおやつ」なんか食べたり、1日5食とか6食とかのちょこちょこ食べスタイルに切り替えたり、完全に効率の悪い苦労をしているダイエッターが相当いそう。
ライザップ式の厳しい糖質制限+追い込む筋トレというのもそれに近くて、糖質制限により脂肪とともに筋肉も落ちるが、週に2度厳しくトレーニングをやってプロティン飲むことで筋肉をつけてリカバリーしているということになりそう、それって「ブレーキとアクセルを両方ベタ踏み」みたいな感じがする。
普通~痩せでいいからだ作りたい人は、そこまで脂肪をへらす必要もないのだし、適度に糖質を取り、タンパク質モリモリ摂って筋トレしたらいい。でも、すでに太ってる人は健康を損ねない程度は空腹と低血糖に耐えて脂肪を減らし、食べグセとか食欲を正常化してから、あらためて筋肉を付けること考えたほうがいいんじゃないかと思う。「元の食事に戻すとリバウンドする」のであれば、そのまま一生できる食習慣にすれば良いのだし、筋トレだってやめたら筋肉落ちて太るし同じだよね。
ゆるめの糖質制限は何年も続けてる人がいるけど、ライザップ式の糖質制限は、その期間が終了した後に反動でむちゃくちゃ糖質が食べたくなるという話を聞く。だからこそのリバウンドなのだろうけれど、そのへんにヒントはありそう。