京都バスには年に1度、春分の日にしか走らない系統がある。大原から江文峠経由で鞍馬に抜ける95系統というやつ。大原も鞍馬も京都洛北の観光地であるし、直行できる便は便利ではあるけど、道中の道があまり良くないとかいろいろあって年に1度だけになったらしい。年に1度だけ残す理由は「免許維持路線」で検索するとだいたいわかると思う。
ちょうど近所でもあるし、洛北方面に行くのはわりと好きなので乗りに行ってみた。
95系統はちょっと小ぶりなバスで運行されており、それ用のバスを大原まで運ぶために、高野の車庫から大原まで向かう便がこれまた年に1度運行されることになってる。今回、そこから乗ることにした。朝10時15分発なんだけど、10時前の時点ですでにかなりの行列ができている。だいたい見れば「同業者」であることがわかる。マニアの行列ってなんで見るだけでわかるんだろう。
高野車庫、ちょうど10時14分に大原行きの普通の定期バス(これは1時間にだいたい2便ある)が来るんだけど、待ってる客の目的地は大原であるにもかかわらず誰一人乗らず車内はガラガラ、とにかく全員その後のバスに乗り込むのが面白い。
同じ大原行きだけど、こっちのバスは少しルートが違う。道中「野村別れ」のバス停から、通常の路線は直進するところ「野村」経由でちょっと遠回りする。
http://www.kyotobus.jp/route/timetable/pdf/takanosyako_ohara.pdf
↑これがその時刻表。「大原札の辻」から「寂光院道」は他の系統のバスは通らない。
もともと「江文峠」近辺のバス停は95系統しか停まらず、年に1度しかバスが来ないバス停として有名だったんだけど、大原から貴船口まで向かう55系統というバスが毎日走る定期便として新設されたので、江文峠あたりのバス停にも定期バスが通るようになった。しかし「大原札の辻」から「寂光院道」は、この、系統の名前もついてない「高野車庫→大原」便だけが停まるバス停なので、正真正銘年に1度しかバスが来ないということになる。
ちなみに、年に1度だけ走る高野車庫→大原便はもう1つあり、そちらは高野車庫から一旦北大路通に出て白川通を通るルートになる。当初、こっちに乗ろうかと思っていたんだけど朝寝坊したので断念した。
バスは川端通りを北山まで、修学院から白川通に入る。このあたりは母校の近所なのでとても懐かしい。白川通からはどんどん山のほうに向かい、野村別れから野村、大原札の辻に入った途端に車内表示をみんなカメラで撮影しだしたりイベント感が出てきた。
大原につくとすでに相当の行列。1台では乗り切れないというので臨時増発が決まり、私は後のほうの便に乗ることにした。雨だし混むし、座れなかったらしんどいなあと思ってたけど余裕で座れて助かった。
あとは小さいバスがひたすら山道を走る。この路線は市原から二ノ瀬の集落に抜けるルートを通る。わりとスムーズに鞍馬まで着いた。55系統は定期的に走ってるし、大原の朝市行って、その後貴船までバスで行くのなかなか楽しそう。
鞍馬でちょうどお昼になった。せっかくなのでさらに面白いバスに乗りたい。ここから32系統広河原行に乗るということを思いついた。鞍馬から広河原までは「酷道」として名高い477号線を通る、屈指の狭隘路線。1時間弱ほど自由乗降区間が続き、バスは接近を知らせるためのメロディを鳴らしつつ離合したり切り返したり。そして、終点の広河原には本当に何もない。帰りの便まで数十分の時間を潰せる場所は、たった1軒の喫茶店だけだ。
tabelog.com
店が開いてるなら行ってみようと電話をかけたら、開けるか開けないか微妙、ちょっと約束できないといった返事が帰ってきた。のんびりしている。あいにく天候も悪いし寒いのでちょっと近所を散策といっても無理がある。今回はあきらめて、32系統で街まで戻るという方針にした。
鞍馬から京都の市街地まで帰る方法といえば、普通は叡電だけど、意外にバスも便利で、国際会館前駅までのバスはわりと本数もあるし、そこから地下鉄に乗ればスピーディに帰れる。また、広河原から走ってくる32系統は行き先は出町柳だけど、上賀茂神社から北大路経由なので家に帰るにはむしろ便利。ちなみに私の尺度では時間がかかっても「始発から座って帰れる」=便利ということになっている。上賀茂神社から市バスの46系統に乗ると家のすぐ近くのバス停まで直行する。ただし32系統は1日に3便しかない。次の便は15時台までないので、くらま温泉の日帰りコースでのんびり待つことにして、叡電の駅前から送迎バスに乗り込む。結構待ち時間もあるんだから、いきなり温泉に行く前に鞍馬寺の参拝でもすれば良いようなものだけど、雨で寒かったので温まりたかった。
www.kurama-onsen.co.jp
今回はわりと家族連れっぽいお客さんが多かった。お風呂で終始大声でしゃべりつづけてるマダムがいて閉口したけど、食堂に行くとやはり大声マダムたちのトークが継続していた。「あなたはカメレオンだからこういう性格」みたいな謎の占いの話が繰り広げられており、スマホで調べたらゲッターズ飯田のナントカって占いらしい、おそらく四柱推命ベース。そして彼女たち、もっとずっと年上かと思ったら、自分より5つぐらいしか違わないということがわかり(占いの話は年齢がわかる)なんかしみじみとした気持ちになった。こっちはいい大人がバスに乗って喜んでいるというのに。ちなみに私は「金のカメレオン」タイプで今年から幸運期らしい(結局調べている)
だらだらしていたら帰りのバスの時間になったのでバス停で待つ。
32系統のバスが近づいてきて「アニー・ローリー」が聞こえてきた。鞍馬から広河原までが自由乗降区間なのでバスの接近を知らせるための音楽を鳴らしている。鞍馬温泉はギリギリその区間だから、なんとなく得した気分になった。
あとは普通に街まで降りて、上賀茂神社の前の神馬堂さんでおみやげにやきもち買って、市バスの46系統に乗って家まで戻ってきた。充実しててよかった。広河原はまた別の機会に絶対行きたい。晴れてたら、散策したり写真撮ったりそれなりに楽しそうだし。