ざつライフログ

That's lifelog

日記 7/14

関西のパンとか

京都とか神戸の人のパンへのこだわりは他の地域の人には説明してもなかなか理解されないものであり「惣菜パンを食事代わりにする習慣がある」などという珍説まで出てきて内心ムカついている。自分は明石の東のほう出身で、京都も長いのでわりとパンに対する熱意は持っている。東京でも暮らしていたけれど、東京に関西の街場のパン屋さんみたいのがないというのはわかる。名店と言われるパン屋のはさすがに美味しいのだが、毎日食パン買ってそのついでに子供に惣菜パンや菓子パンも買うような店で贔屓にできる店はなかった。10年暮らして「いつものパン屋さんでパンを買う」という習慣が完全になくなるほどに店がなかった。

さらに地方にいくとそもそもパンの質自体が絶対的に違ってて、ホテルの朝食ビュッフェで美味しそうなパンの匂いに誘われて皿に置いたはいいが口に入れた瞬間「?????」ってなる体験って本当にある。オーブントースターでリベイクしてバターの香りが漂うクロワッサンを口に入れると薄揚げのような食感でベチャッと染み出す油、なんですかこれはみたいなことがあるのよ。ゆえに朝は和食派になった。逆に米は地方にいくとそれぞれ美味しい。関西はダメと米どころの人がいうけど、これは米の質というより炊き方に対する思い入れの問題じゃないかと思う。関西では米をわりと硬めにパサッと炊く人が多いから。
なお、朝ごはんではなくおやつとして食べるなら地方の謎パンはわりと好きで、気仙沼クリームサンドとかかなり良いですね。

で、関西における惣菜パンについては、確かに食事代わりにもなるけれどそれはあくまでファストフードって括りであって、多少は特別な日のものであり日常的なものではない。
食べ盛りのお子さんがいたらおやつに惣菜パンはあるかもしれないが、たいていはお出かけの時にイートインでちょっと食べたり、お天気がいいから川を見ながら食べましょかっていってトンビに奪われたり、寝坊した日曜は朝昼兼用で惣菜パンにしたり、部活帰りにみんなで食べたりとかそういうもんである。
普通にわれわれが「美味しいパン」というときに想定するのは、朝ごはんに日常的に食べるトーストであり、クロワッサンであり、食事と合わせたりワインのアテにするバゲットであり、時にはカイザーロールであったり、基本はプレーンで噛みしめると麦の味がしてイーストの香りが鼻に抜ける香ばしいパンで、「西の人はヨーロッパ仕込みの本物のパンを食べないから」みたいなことをしたり顔で言ってる東京モンに対しては「ケッ」ってなもんである。なんせ地価が安いんだから、本場で修行して帰ってきた職人が小さい店をつくるということが普通にできるし、さらに言うとパンは運搬性高いから工房とは別にどっかの店で間借り営業するスタイルもある。採算ラインが低い。東京における「パン屋の名店激戦区」ってのはあくまで商業ベースに乗る強者だけがしのぎを削るから没個性になりがちで、京阪神にはより趣味性が強いパン屋が生き残れる風土がある、そういう強みがある。

京都なり神戸なりの街場にあるパン屋の構成って、だいたい主力は食パンとバゲットとクロワッサンあたり。それとは別にトング持って買う惣菜パンや菓子パンも置いているけど、そっちが中心ということはないと思う。実際、たいていの街場のパン屋さんに「おたくの自慢は?」って聞いたら、惣菜パンのほうが出てくることはあんまりなくて「創業以来焼き続けてるカンパーニュです」「複数産地の小麦粉の組み合わせにこだわってる角食です」みたいなことが多く、そしてプライドもって作ってる定番を予約入れて焼き上がり時間に買いに来る常連客がいるのがパン屋の誇りであり、その常連客には一般客ではなく星付きのレストランも含まれていたりする。その上で、買いに来たお客さんとその子どもたちを喜ばせるために多彩で個性的な惣菜パンや菓子パンも揃えて、そちらも手を抜かない。デニッシュやクロワッサンは芳醇なバターの香りと軽やかな歯ざわり、菓子パンはもっちりふわふわのやさしい食感、上質な食パンに趣向を凝らした具を挟んだサンドイッチ、なぜか本格カレーが入ってるカレーパン、そういうのを全部やるのが街場のパン屋なのである。

まあ、有名なパン屋にわざわざ遠方から来る人は惣菜パンを買ってイートインで食べるか持ち帰って食べるかだろうし、わざわざデカい食パンやバゲット買うということはない。そして、東京中心のメディアでは関西情報は旅行者目線で発信される。ゆえに、関西のパン屋は惣菜パンが強いと誤解されるのは致し方ないのかもしれない。さらに「まるき製パン所」みたいな惣菜パンの人気店も存在することがノイズにもなってて、それだけ聞きかじると「あー、関西の田舎モンはふわふわのコッペパンにおかず挟んだようなやつをありがたがって食事代わりにしてるんですね」って誤解されても仕方がない。

しかし「関西じゃあ軟弱でふわふわで子供向けの惣菜パンだけがありがたがられるから本格派のパンの味がわからねんだよウププ」という説が本当だとしたら、志津屋のカルネがソウルフード扱いされてるのはどう解釈すんのさ。あれは確かに「惣菜パン」であるが、リーンなカイザーロールをざくっと切ってペラいハムと玉ねぎにマーガリン、それだけのシンプルな食べ物である。不思議にそれが調和しており、噛みしめると「これが昔ながらのパンの味だなー」としみじみ嬉しくなる、そういうものである。
東京でいえばvironのジャンボンフロマージュみたいな方向性の、ストイックで硬くてシンプルなサンドイッチを「ソウルフード」としてそのへんの庶民が駅の売店で買って食べてる、これは文化的と威張ってもいいことじゃないのかと思っている。東京に気を張る用事で出張する時、行きの新幹線でカルネを食べると、負けへんでという気持ちになる。

ところで「乃がみ」とか「ボロニヤ」みたいなリッチ系の食パンについて関西人はどう思っているのかという話ですが、あれは「手土産」です。
自分で買っては食べないけど、手土産としてもらったやつを食べるわけ。「ええパンや!」って言って喜んで食べはするけど、自分では買わない、そういう感じじゃないかな?

「お客さんにええパンをいただく」というイベントは実家では割とあったし、京都で呑んだくれの学生→OLやってたときも常連客が店の大将にええパン持ってくるとかたまにあった。家飲みやる時も話題のパン持ってくる人は結構いるし、食パン一斤が手土産になりえる、そういう世界だわね。

ついでに私のおすすめのパン屋さんを貼っとこう
panscape-kyoto.jp
美味しいパンで全粒粉という選択肢が普通にあり、住宅街の「そのへんのパン屋」として存在するのが非常にありがたいのです。
閉店時間の記載がありませんが、売り切れたら終わりというスタイルです。